【理系就活生必見】メーカーに就職するためにやるべきこと
こんばんは!
とある化学メーカーでバリバリ働いています、バイオニアです。
本日は、私がメーカーに就職するにあたって考えていたこと、こうすればよかったと思うことを紹介します。
2020年の就職活動はコロナウイルスの影響で厳しいものとなっているかと思いますが、準備をしっかりとしてワンチャンスをものにしましょう!
目次
- ①今後の人生で何を重視するか明確にしよう
- ②研究概要と発表スライドを早めに完成させよう
- ③説明会の度に質問を考えよう
- ④自己紹介のレベルを上げよう
- ⑤面接中に一度は山場を作ろう
- ⑥テストセンターは舐めずに対策しよう
- 総括
①今後の人生で何を重視するか明確にしよう
自分が今後何を重視するのか、いわゆる「選社軸」を決めることから始めました。会社とのミスマッチを回避するため、面接でも聞かれることが多いため、文字に起こして整理してみるといいでしょう。
私は、「勤務地」「お金」「やりがい」「職種」「ワークライフバランス」「社風」「社員の特徴」といった種々のパラメーターを設け、優先度をつけていました。
この中でも、社風や社員の特徴は、重要にもかかわらず外部からは見えにくいところです。大学へのOB訪問や説明会、インターンを活用し、積極的に情報を集めるようにしましょう。
理系の場合は、「企業が持つ技術」に日々目を光らす必要がありますね。
私は総合化学メーカーと製薬企業を中心に見ていたので、日経バイオテクやAnswersNews、ケムステなどから情報を集めていました。
日経バイオテク(https://bio.nikkeibp.co.jp/)
AnswersNews(https://answers.ten-navi.com/pharmanews/)
ケムステ(https://www.chem-station.com/)
マイナビ テクノロジー(https://news.mynavi.jp/top/business/technology/)
②研究概要と発表スライドを早めに完成させよう
メーカーへの就活では、必ずと言ってよいほど研究概要の提出が求められます。会社によって異なりますが、A4一枚、二枚バージョンを作っておくと安心です。作成したものは、教授や研究室スタッフに加え、OBにも見てもらって完成度を高めると良いです。
(特許や論文の問題から、一度は教授に見せることになるとは思います。研究内容について教授ほど詳しい人はいませんが、文章が難解になりすぎる可能性があるので注意。)
研究概要は、研究をただ詳しく書くだけでなく、「自分だからここに着想できた!」というアピールや、「卒業までにここまでやり遂げたいんだ!」という将来を示すのがコツです。
また、一次もしくは最終面接の際には研究の口頭・スライド発表がある場合が多いです。これも会社によって様々ですが、1分・3分・5分・7分・10分で話せるようにしておけばオールオッケーです。
研究の目的から話し、冗長にならないよう注意しましょう。
これも研究室メンバーなどに相談してみてもらうとよいです。
③説明会の度に質問を考えよう
説明会には、社員さんとの座談会が設けられている場合が多いです。その際に質の高い質問ができるよう、事前にニュースを調べて質問を考えてから選考に向かっていました。
質問をすることは、以下のようにいいこと尽くしでした。
・難しい質問をぶつけて社員の対応を見ることで、会社・社員のレベルをある程度把握できる。
・「いい質問だね」と言われ、大学名と名前をメモられた。
・「面白い質問をする学生がいる」と印象に残ったと、(現在働いている会社の)人事から評価された。
④自己紹介のレベルを上げよう
おそらく全ての企業で、最初に自己紹介を求められました。20-30分間の面接のうち、学生が話す時間は10分程度であり、そのうち1-2分が自己紹介です。さらに、自己紹介を基に質疑応答があることを考えると、面接において自己紹介が占める役割は非常に大きいといえます。
そのため、大学が運営するキャリア支援センターへ行き、自分が納得のいく自己紹介を作り上げました。
私が周囲を見ていた限りでは、理系学生はここが弱いです。面接の初めから面接官の心をつかみ、他の学生と差をつけましょう!
⑤面接中に一度は山場を作ろう
「他の選考参加者と(良い意味で)違うな」と感じてもらえるよう、自信のあるエピソードを必ず組み込むようにしていました。私の場合は、自己紹介に組み込み、質問を誘導していました。アピールせずにダメだったら後悔が残りますが、アピールしてダメなら会社と合わなかったと割り切れると思います。
⑥テストセンターは舐めずに対策しよう
「理系で院まで行ってれば余裕で解ける」と言われ、対策が蔑ろになりがちです(笑)。実際、難易度としては高くありませんが、早く解くためには少し練習が必要でした。
また、志望度の高くない企業で練習してからテストを受けると良いと思います。私の場合、最初のテストセンターが志望度の高い企業でした。順調に説き進めていたのですが、途中で画面がフリーズし、スタッフの方に直してもらったら残り時間が減っていて焦りました。問い合わせても事務的な対応で、「受けてしまったものはしょうがない」と言われて悲しくなりました(結局その結果でも通過したので良かったですが…)。
①~⑥を試行錯誤しながら見出していった結果、製薬、大手総合化学メーカーなどの4社から内々定を頂き、満足のいく就活が出来ました。
総括
就職活動は「運」や「縁」だと主張する声をよく聞きます。私もそれは大いにあると思いますが、「いかにして運や縁を手繰り寄せるか」ということを意識する必要があります。
その一例として、受ける企業数を多くすることがあると思います。どんなに上手いESが書けても、通過率100%の人はほとんどいないでしょう。さらに、一次・二次・最終面接と、通過割合は決まっています。ES通過率が60%、一次・二次・最終面接の通過率がそれぞれ50%としても、一社の内定を得るためには最低14社受ける必要があります。もちろん、ESが得意な人・面接が得意な人でこの計算は変わりますが、ある程度定量的にやらなければ縁を手繰り寄せられません。
研究室によっては、「教授から数社しか受けるな」と言われる場合もあるようですが、教授は私たちの人生に責任を負う立場ではありません。
自分の人生を決めることなので、決して舐めずに、就活を進めていってもらいたいと思います。
色々と書きましたが、あまり気負い過ぎず、時には同期や先輩に相談し、自分の将来と向き合ってみてください。
応援しています!
他の楽しみよりもアルコールを選んでしまうメカニズム
こんばんは!
生化学の論文を愛してやまないバイオニアです!
(biologyとpioneerを組み合わせています。。)
本日は、「他の楽しみよりもアルコールを選んでしまうメカニズム」という、アルコール依存症の方必見の論文を紹介します。
2018年に、サイエンス誌に掲載された論文です。
(Science 360, 1321–1326 (2018) Augier et. al)
目次
日本とアルコール依存症
アルコール依存症とはご存知の通り、自らの意思で飲酒を制御できず、強迫的に飲酒を繰り返す精神障害のことです。
2013年と少し古いデータですが、日本の人口の約1%にあたる113万人がアルコール依存症と言われており、「飲酒のコントロールがきかない」症状に悩まされています。
これまでの研究において、アルコール依存症の方が感じる楽しみ・欲求に関する研究は進んでいましたが、依存症の分子メカニズムや治療ターゲットははっきりと分かっていませんでした。
本研究のコンセプト
本研究では、以下の図に示した戦略で、酒が他の楽しみよりも優先されるメカニズムを明らかにしました。
1.ラットに甘い物(サッカリン)とアルコールを交互に経験させる
2.甘い物とアルコールの両方を選べる環境にしてラットの挙動を観察する。
3.挙動から、甘党のラットとアルコール中毒ラットを選別する。
4.ラットの脳の複数部位で遺伝子発現解析を行う。
戦略としては非常にシンプルですが、しっかりと計画しやり遂げているところがすごいと思います笑
アルコール中毒ラットの選定
試験の前準備として、まず、甘い物(サッカリン)がアルコールを超えるような高価値な楽しみとして適するか検証しています。
比較対象が魅力的でなければ、アルコール中毒ラットを選ぶことが出来ないためですね。
まず、10週間ラットに20%エタノール(酒)を飲ませるトレーニングをした後、エタノールか0.04%サッカリンかを選べる環境にラットを10日間閉じ込めます。その後の13日間では、サッカリンの濃度を0.2%まで上げ、再度エタノールとサッカリンのどちらを選ぶか評価しています。
その結果、サッカリンの濃度依存でアルコールの選択率が低下することが分かり、甘い物はアルコールの楽しみを打ち負かすことが分かりました。
一方で、15.3%(95/620)のラットがサッカリンよりもアルコールを選択しており、中毒ラットを選定することが出来ました。
(この15.3%という値は、人間のアルコール依存症の割合と近いと著者らは記述しています。)
アルコール中毒ラットの依存性評価
次に、こうして選定したアルコール中毒ラットが、どれだけアルコールに依存しているかの評価です。
キニーネという苦み成分を、濃度を振ってアルコールに混入させ、甘党・中毒ラットのアルコール選択率を観察しました(下図左)。
その結果、キニーネの濃度依存で
・甘党ラットはアルコールをさらに選ばなくなる
・中毒ラットは変わらずアルコールを選択する
ことが分かりました。
同様に、アルコールを飲むと足に電気ショックを与えたところ、
・甘党ラットはアルコールをさらに選ばなくなる
・中毒ラットは変わらずアルコールを選択する
ことが分かりました(下図右)。
苦みや苦痛を与えてもなおアルコールを選ぶ、哀しきラットが誕生した瞬間でした…
アルコール中毒の分子メカニズム
さて、ここまでの検討で、他の楽しみよりもアルコールを選んでしまうような中毒ラットを選定することができましたので、本題の分子メカニズム解析に移ります。
まず、脳の複数部位における遺伝子発現を、デジタルカウント遺伝子発現解析(nCounter)という手法で定量しました。
その結果、甘党ラットと中毒ラットにおいて、扁桃体(側頭葉内側の奥に存在する神経細胞の集まり。情動反応の処理と記憶において主要な役割を持つ)の遺伝子が大きく異なることが分かりました。
そこで、qPCRを用いて扁桃体での遺伝子の定量を試みたところ、神経伝達物質の一種である「GABA」の細胞外濃度を低下させるトランスポーターの転写量が減少していました。
これより著者らは、
中毒ラットはトランスポーターの量が低下(特にGAT-3)
⇒ GABAが高濃度のままとなる
⇒ 扁桃体の興奮が高まる
⇒ アルコール依存症につながる
との仮説を導きました。
著者らは、この仮説を検証すべく、甘党のラットからGAT-3トランスポーター遺伝子を欠損させ、アルコールの選択率を評価しました。その結果、なんと甘党ラットのアルコール選択率が上昇したのです。これより、GAT-3とアルコール依存症には因果関係があることが分かりました。
最後に、①アルコール依存症 ②その他の病気 でなくなったヒトの遺伝子発現を解析しました。その結果、アルコール依存症のヒトでは、CeA(扁桃体の中心)のGAT-3遺伝子が減少していることが分かり、ラットだけでなくヒトにおいてもGAT-3とアルコール依存症の因果関係が認められました。
まとめ
今後、アルコール依存症患者のGAT-3遺伝子が減少する理由が分かれば、依存症を治療できるかもしれません。
「依存症」というあいまいな症状に対し、途方もない計画を立てて分子メカニズムの特定にまで至った本論文の著者らをたたえ、記事を終了させていただきます。
アルコール中毒になったラット、ありがとう…。
ブログの方針について
はじめまして!
科学大好き、バイオニアのブログです。
簡単に自己紹介させていただきますと、
旧帝大にて修士号取得後(分子生物学)、大手総合化学メーカーで勤務しています。
現在は、医薬品に関連した事業に携わっています。
当ブログを立ち上げた理由は、大きく2点あります。
① 日々のアウトプットを充実させるため
社会人1年目を振り返り、学生時代と比較してアウトプットの量が著しく低下していると感じています。学生時代は、論文抄読会や研究報告会を通してアウトプットを繰り返していましたが、現在は月に2度、プレゼンの機会があればいい方です。
②科学の楽しさを伝える活動が好きだから
学生時代より、サイエンスコミュニケーション(研究者と市民の方々の溝を埋める活動)に興味を持ち、科学イベントを主催していました。
将来の夢は、生命の不思議さ・面白さを世に広く伝えられるような絵本を書くことで、そのために表現力を磨きたいと考えています。
当ブログでは、以下のコンテンツを充実させていきたいと考えています。
①面白い論文の紹介
論文ウォッチ(https://aasj.jp/watch.html, NatureやScienceの論文を一日一報紹介してくれる、神サイトです)のように、学術的に面白く、キャッチーな論文を紹介したいと思います。生化学がメインになると思いますが、自分の興味の幅を広げるため、専門外の論文も読むよう心がけます。
②理系の就活と、メーカー勤務の実情
③日々の学習記録
④趣味のこと(温泉巡り、登山、読書、投資等)
気長に続けたいと考えていますので、ごゆるりと、長い目で楽しんでいただけたら嬉しいです。
これからよろしくお願いします!!