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【多面的に見る】新型コロナ治療薬の開発状況(4/21現在)

こんばんは!

本日は、新型コロナ治療薬の開発状況に興味を持ち、調査したので記事にします。

 

連日、「世界中で新しい治療薬が開発されている」とか、「アビガンやレムデシビルという薬が効くらしい」とのニュースが流れていますが、横文字ばかりで正直覚えられないですよね(笑)。そんな方にも分かりやすいように、色々な薬がある中で注目すべき項目をピックアップし、表にまとめてみました。(20/4/21作成)。

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新型コロナウイルスの医薬品開発状況


◆表から読み取れる大事なポイント

 

1. 新型の感染症への対応は既存薬メインとなる

 調査しきれていない分も当然あると思いますが、開発中の主な治療薬のほとんどが既存薬です。唯一「新薬」と表記したレムデシビルも、もともとはエボラ出血熱の治療薬として開発され、有効性の低さから中断された薬です。

 ここで、既存薬を応用しているのは、有効性が確認されればすぐに医療現場で使用できるためです。新薬をゼロから開発して実用化するためには、10~20年の時間が必要となってしまう一方で、既存薬では安全性確認等の時間がかかる作業が終わっているため、短期間で使用できる可能性があるのです(この考え方を「ドラックリポジショニング」と呼びます)。

 レムデシビルは、重症患者の回復につながったとの報告から注目されていますが、これまでに認可・承認されておらず、その安全性や有効性が未確立なことが大きなネックと言えるでしょう。

 

2. 錠剤か注射剤か

 医薬品は、構成化合物の分子量によって、低分子医薬品と高分子医薬品に分類されます。(正確には近年、中分子のペプチドも注目されていますが、ここでは割愛)

 低分子医薬品は、標的への結合能が低く副作用が起こりやすい一方で、錠剤として口から飲むことが出来ます。

一方で高分子医薬品は、標的への結合性・特異性は高く(値段も高い)副作用が起きにくいが経口投与できないため、注射により投与されています。

 このように、医薬品のフォーマットは一長一短であり、症状に応じての使い分けが必要となりますが、経口投与できる錠剤には大きな役割があると私は考えています。考え方は非常にシンプルで、高分子医薬品での治療では病院での注射がマストとなるからです。医療関係者の感染が続々と報告される現状において、病院に多くの患者さんを集め、皆に抗体医薬をはじめとする高分子医薬品を投与するのは非現実的です。高分子医薬品の利用は、重篤な患者を対象とすることになると思います。

 以上より、投与の簡便性からは、アビガンやシクレソニドといった薬は有望ですが、危険性・効果を相談・調査して正しく把握することが大切です。例えばアビガンには、催奇形性があるため妊婦に投与不可という課題があります(男性の精液中に移行するとの報告も)。

 

3. 開発状況

 ①にて、既存薬であれば実用化にあまり時間がかからないと書きましたが、それでも数カ月~数年の時間を要してしまいます。

【アビガン】

 アビガンは、富士フイルム富山化学が開発した抗インフルエンザ薬であり、国内承認済みです。重篤ではない肺炎を合併した新型コロナ感染症の患者を対象とする、第3相臨床試験を6月末までに実施するようです。日本には、医薬品の審査スピードを速める「先駆け審査指定制度」がありますが、最速でも6か月程度が必要となることを考えると、法整備なしでは早くて年内の適用となるでしょう。頑張れ日本政府!

 

【レムデシビル】

 レムデシビルは、コロナウイルスを含む一本鎖RNAウイルスに対し、複製阻害作用を持ちます。日本を含む世界各国で第3相臨床試験を実施中であり、日本では4月14日から患者への投与が始まっています。5月までに重症・中等症患者対象の試験結果が得られる予定です。

【シクレソニド】

 シクレソニドは、帝人ファーマが開発した吸入ステロイド薬です。国立感染症研究所から、強い抗ウイルス活性を有することが示されています。実際の患者に投与され、良好な経過を得たとの報告例があります。第2相臨床試験が始まっており、7月頃には結果が出てきそうです(https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04330586)

 

【アクテムラ・ケブザラ】

 新型コロナ特有の症状が、重症の肺炎です。その肺炎重症化を抑制する効果があるとされるのがリウマチ治療薬で、中外製薬のアクテムラやサノフィのケブザラがあります。アクテムラは4月から治験を開始し、米国で今秋の承認を目指して動いているようです。

 

まとめ: 医薬品の普及はまだ先。予防を徹底しよう。

 3つの観点から新型コロナウイルスの医薬品開発状況を見ましたが、既存薬を転用してもなお医薬品の普及には時間がかかります。

 手洗いうがいを徹底する、咳エチケットを守る、三密を防ぐことなどを愚直に守り、自分だけでなく周囲の人間も守っていきましょう。

 

 ゴールデンウィークに外出できないのは寂しいですが、今は勉強して自分を高めたり、時間が必要な趣味に没頭してみてはいかがでしょうか。

 

*新型コロナウイルスの情報は、山中伸弥教授のHP(https://www.covid19-yamanaka.com/)で非常に分かりやすく説明されています。コロナウイルスを「正しく」恐れましょう。

 

◆参考にしたサイト

・AnswersNews 「新型コロナウイルス 治療薬・ワクチンの開発動向まとめ【COVID-19】(4月17日UPDATE)」https://answers.ten-navi.com/pharmanews/17853/

 

・日経新聞「新型コロナ治療薬 開発急ピッチ」

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO58240640Y0A410C2MM8000/